ヒューマンオーグメンテーションから導き出されたスポーツクリエイションが、人間の能力を気付かせる インタビュー:南澤 孝太氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授/超人スポーツ協会 事務局長)

柿崎俊道(編集者)
南澤 孝太
(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)教授/超人スポーツ協会 事務局長)

2010年 東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了,博士(情報理工学) 触覚技術を活用し身体的経験を伝送・拡張・創造する身体性メディアの研究開発と社会実装, Haptic Design を通じた触感デザインの普及展開,新たなスポーツを創り出す超人スポーツやスポーツ共創の活動を推進。

 南澤孝太先生は「超人スポーツ協会」を2014年に設立し、現在に至るまで牽引する。超人スポーツの「スポーツ共創」へのアプローチは、よりテクノロジーを押し出していることが特徴だ。大学の研究機関や企業の開発者が積極的に参加し、未来のスポーツの開発に挑む。しかし、「以前はテクノロジーの研究者とスポーツは疎遠だった」と南澤先生は語る。

「スポーツというものが、自分たちのフィールドにあるということを思い描いていなかった」(南澤孝太)

「超人スポーツはテクノロジーで人間を拡張するのではなく、人間のさまざまな能力が花開くようなスポーツをテクノロジーで作っているのではないか」(同)

meets Sports. 研究者とスポーツが出会うことで、世界は広がった。それは、どのように広がったのか。そして、どのように広がるのか。

 スポーツ共創の可能性について、「超人スポーツ」の南澤孝太先生に聞く。

東京オリンピックに向けてテクノロジーが人間の能力を拡張し、未来のスポーツを生み出す

―― 「スポーツ共創」の活動のなかで、「未来の運動会」とともに進行しているプロジェクトが「超人スポーツ」です。「超人スポーツ」は大学を中心にして展開し、新たなスポーツを作り出そうとしています。本日は「なぜ、大学で超人スポーツを研究するのか」というテーマで南澤孝太先生にお話をお聞きします。どういった目的で、「超人スポーツ」を進めていらっしゃるのでしょうか。

南澤孝太 「超人スポーツ」を進めている僕らは、共同代表の稲見昌彦先生(東京大学 先端科学技術研究センター 教授)をはじめとして、今までバーチャルリアリティーやロボット、あるいは人間の身体の運動を拡張する、人間の感覚を拡張する、といった研究を、ずっとやってきたメンバーです。

 2013年に東京オリンピックが決まったときに、そういう人たちが集まってオリンピックそのものをどう捉えるかを議論しました。このオリンピックは僕らに関係がないイベントなのか、それとも自分達に関係があるイベントなのか。その議論の末に、僕らができることは、今作ってる技術をスポーツに展開していくことなのではないか、という話になったんです。

 技術をスポーツに展開したときに、そこで生まれるものは何だろうか。それは拡張された人間たちが行うスポーツであろう、と。テクノロジーが人間の能力を拡張し、未来の人間が新しいスポーツをする。そういうシーンを描ければ、それは僕らが作りたい未来のひとつの姿ではないか。それを「超人スポーツ」と名付けよう、ということではじまったのが、2014年です。

―― スポーツ以外の選択肢もあったんですか?

南澤 僕はもともと技術を主にエンタテインメント分野に使っていました。医療分野でヘルスケアへの活用を進めている研究者もいます。でも、僕らはスポーツに技術を使うことを考えていなかったんです。スポーツというものが、自分たちのフィールドにあるということを思い描いていなかった。だから、技術を使うとなると、まずはVRゲームだよね、とすぐに考えたし、トレーニングや教育、あるいは将来的に医療とかね。遠隔で離れていても仕事ができる環境といったことも考えていたし、実際に研究していた。そういったことは10年、20年の研究で積み重ねがあります。しかし、「スポーツを作ろう」というのは、びっくりするくらい誰もいわないし、考えていなかった(笑)。

「スポーツ」が、超人スポーツの議論を踏まえて一気に僕らの研究の応用領域の話になりました。超人スポーツが生まれたことによって、いろいろなテクノロジーを研究している人達が、自分達のテクノロジーをどのようにスポーツに展開できるんだろう、ということを考えるようになった。これは大きなパラダイムシフトでした。

超人スポーツの誕生

―― 2014年に「超人スポーツ委員会」を発足しました。

南澤 超人スポーツをやらないか、とさまざまな研究者に声をかけました。皆、それは面白そうだ、と「超人スポーツ委員会」という研究者の集まりが生まれました。そこで、2014年10月にプレスリリースを出したんですよね。すごい反響でした。

 実はその時点までは、2020年の東京オリンピックに合わせて超人スポーツとして新しいスポーツのデモがいくつかできればいいかな、くらいに考えていた。そうしたら「いつそれはできるのか」「自分たちはいつ体験できるんだ」「それは新しいイベントになるから、こういった施設に導入できないか」といった問い合わせが殺到した。僕らの研究に「スポーツ」という文脈が入ったことによって、一気に既存のスポーツやメディアやエンタメの人たちに刺さってしまった。スポーツは裾野が広い分野です。テレビなどのメディアはもちろん、施設や教育など、隅々までスポーツという領域は浸透している。そこへ「超人スポーツ」という概念が一気に染み込んだ。

―― 僕も当時のことは憶えています。発表会には多くのマスコミが参加していましたね。

南澤 これは大学内の研究だけに収めるのはまずいのではないか、となりました。今まで接続がなかったところから本当にびっくりするくらい引き合いが多くなったし、世の中の期待に追いつかない。これまで様々な産官学のプロジェクトを立ち上げている中村伊知哉さん(慶應義塾大学 教授)からいろいろな知見をいただいて2015年6月、大学の外に「超人スポーツ協会」という新しい組織を作りました。テクノロジーを組み込んだ新しい未来のスポーツを作り出していく、それを産官学で連携して行う、という概念が生まれました。

 スポーツを通して各界と接続した瞬間に、今まで自分達がやってきた色々な研究や開発が広がった。本当に一気に広がった、という感じが強い。大学の研究者からはじまった「超人スポーツ」が他大学や外の研究所の人間に広がり、他の学会、学生の中で超人スポーツを企画して、それぞれ自分たちで新しいスポーツを作るようになりました。今、海外にも広がっています。アメリカ、フランス、オランダ、スイス……。さまざまな国の研究者が超人スポーツが面白いということで、自分たちのテクノロジーを活かしたスポーツをつくりはじめています。

―― スイスのチューリッヒからはじまった「サイバスロン」というのもありますよね。障害者と先端技術を組み合わせた競技会です。

南澤 サイバスロンには驚きました。ほぼ同じ時期に、同じようなことを考えて実行している人たちがヨーロッパにいた。彼らはほとんどがロボットの研究者です。ロボットテクノロジーを障害を持っている人たちにいかに役立たせるか。サイバスロンはその技術コンペティションをスポーツとして見せることで、発信力を高めようとした形です。サイバスロンとはお互いに意見交換をはじめています。

 違いは、サイバスロンは障害とロボティクスというところにフォーカスを置いているのに対して、僕らは人間の感覚と身体がどう広がるか、という観点で見ています。さらに大きく違うのは、スポーツクリエイションをするというところかな。サイバスロンはルールを決めてコンペをする。ルールが決まっている中でF1のようにプレイヤーとエンジニアが競技をする。そのルールを作っている人間はスポーツクリエイションと言えるかもしれませんけどね。超人スポーツはスポーツのルールから作っていく。僕らは人間は今後、テクノロジーで進化していくんだ、というところにベースを置いています。そのコンセプトをベースにしてスポーツクリエイションをしていく。そういう形で活動しています。

多様な人々がともに超人スポーツを作る

―― 超人スポーツはハッカソンという形でスポーツクリエイションを行っています。

南澤 そうです。超人スポーツ協会を立ち上げるた当初は、手元にはスポーツにつながるであろう技術はあるけれども、ひとつもスポーツがない、という状態に当然直面するわけです。どうしようか、と議論になりました。はじめは各研究室で作ればいいじゃないか、という意見に傾きました、ただ、僕がすごく思っていたのは「そんなことをやっていたら1年でひとつのスポーツを作るくらいが関の山ではないか。それでは世の中の広がりや、期待に対して応えられない……」ということ。そこで、どんどん創り出せるような仕組みとしてハッカソンをやろうと、伝えました。いろいろな人を巻き込んで、多くのアイデアを入れて、さまざまなモノを作っていくことが大事です。

 最初の「超人スポーツハッカソン」は2015年7月に開催しました。犬飼さん、江渡さんなど、今のスポーツ共創のコアメンバーになっている人たちにもご協力いただきました。総勢80人くらいが集まりました。学生もいるし、ハッカソン好きの社会人がいるし、スポーツが苦手だから来たという人もいる。もちろん、スポーツが好き、という人もいます。会場にはセグウェイやジャンピングシューズなど使えそうな道具を集めました。

 それを使って皆で2日間、超人スポーツを創ったのです。最初のハッカソンでは8競技が生まれました。バブルジャンパーとか、ホバークロスなど、今の超人スポーツのコアになる新しいスポーツへの提案はこのときに生まれたものです。大学だけで作られるものには限りがある、と思いました。いつどこで、どう繋がったのかわからない人たちが同じ場に揃い、一斉に物作りをする。そこから新しいものが生まれる。それがすごいよかった。

―― でも、研究者の皆さんは最先端にいらっしゃいますよね。中にいる方々で十分に実現化しそうなのに、外から多様な人たちを揃えたほうがよい、というのは面白いですね。

南澤 自分たちの専門領域に関しては、自分たちで作ったほうがはやいかもしれないし、いいものができるかもしれません。しかし、スポーツはド素人です。超人スポーツがやっていることは、僕らがド素人の領域に入っていくことを意味します。且つ、スポーツにはプロアスリートはいるものの、スポーツそのものは誰のものでもある。僕はその中で、ちょっとテクノロジーが得意な1メンバーとなる。そのほうが、いろいろなアイデアが出て、より良いものできると思いました。

 超人スポーツは、ひとりの人間のたくさんの知識や高い技術力よりも、多様なみんなでやった方がはやく作れるし、いいものができる。実際に出来上がった競技を見ていると、バリエーションがあってすごくいい。松葉杖スポーツのようなケガをしても競技ができるスポーツから、純粋に身体の拡張を目指したスポーツ、ちょっとVRを入れたスポーツ、ドリーミーな感じの妄想ベースのスポーツとかいろいろ出てきました。

―― 僕個人も超人スポーツのハッカソンに参加しました。僕はスポーツは苦手です。でも、サッカーのルールは知ってますし、卓球もリレーも知っている。僕も開発者のひとりとして参加しまして、はじめて会ったメンバーといっしょにスポーツを作りました。ルール作りの意思疎通がしやすかったのをおぼえています。

南澤 そう、スポーツはなんとなくイメージを共有しているんですよね。皆の共通認識というか、共通言語がすごく多い。それがスポーツの特徴かな、と思うんですよ。他のフィールドを考えても、スポーツほど共通言語が多い分野はちょっと見当たらない。たとえば医療は、その分野に携わる人は詳しいだろうけど、多くの人々にとっては少し難しく縁遠い話になります。

 日本の学校教育の中で、必ず皆さん、ひと通りのスポーツをやっている。それが大きいのかもしれませんね。エンタメとしても野球やサッカーを楽しんでいるし、それこそオリンピック、ワールドカップになれば応援します。共通の文脈を持っていることが大きな力になっている。

 超人スポーツを作ってみて、すごくびっくりしたことがあります。皆さん、スポーツを作ると、そのスポーツに物凄い愛着を持たれる。自分が生み出したスポーツは、自分の子供みたいに感じている。ハッカソンの運営側が何もいっていないにも関わらず、皆さんが勝手に開発を続けている。これはやばい、と(笑)。この後、ちゃんとこの新しい超人スポーツを発信できる場を作らないと、この熱量がもったいなさ過ぎる。そう思って、僕らは慌てて同じ年の10月にお台場の日本科学未来館でお披露目の場所を用意したんです。

超人スポーツのお披露目「第1回 超人スポーツEXPO」

―― 「第1回 超人スポーツEXPO」(2015年10月22日-25日開催)は後付けだったんですか。

南澤 後付けです。これはもったいない、世の中に広める場所をつくらなければいけない、とハッカソンの間に気づきました。

―― てっきり、最初から決まっていたものだと思いました。僕も妻といっしょに参加して超人スポーツのガイドをしました。

南澤 あの日は晴天にも恵まれました。すごく良かったのは、未来館の緑の芝生で、できたてほやほやのスポーツを家族連れがたくさん体験してる姿です。あのシーンを見れたのが一番良かった。スポーツを生み出して、それをみんなが楽しむ。そのプロセスを回すことできた。新しい超人スポーツという領域に参加する人が出るし、開発する人も増える。大学で技術を作っていた僕のような人間も、自分たちの技術で人が笑顔になるところが見られた。みんながすごくハッピーになる場が生まれました。

―― 南澤先生には僕らが作った松葉杖スポーツを体験していただきました。

南澤 あの時、僕は実際に足を骨折していたじゃないですか。ちょうど松葉杖を使っていました。このスポーツならすごく得意だぞ、と思って体験しました(笑)。

―― 華麗に松葉杖を操っていらっしゃったのを憶えています(笑)。多くの参加者のなかには小学校の低学年の子がいまして、何度も遊びに来るんです。松葉杖の浮遊感にハマってしまったのか、夢中になっていました。

スポーツはサンドボックス(実験場)

南澤 松葉杖スポーツをはじめとして、超人スポーツから生まれた新しい競技は運動神経に対する僕の概念を変えました。あのときの超人スポーツは、個々人が持つ特技、身体の違いから生まれる、その人の特性を引き出して、活かそうとしていました。そのことが面白い。超人スポーツはテクノロジーで人間を拡張するのではなく、人間のさまざまな能力が花開くようなスポーツをテクノロジーで作っているのではないか。スポーツ共創やスポーツクリエイションにすごく魅力を感じるようになりました。

―― 人間の不足分を機械が補うのではなく、人間の持っている力をスポーツとテクノロジーで引き出す、ということですか。

南澤 そうです。日本ブラインドサッカー協会で試合を見せてもらったことがあります。選手は目が見えません。視力を使わずにロングパスを決めて、パス回しの末に、シュートをする。ふだん視力に頼っている僕らは目を瞑ると何もわからないですよね。ブラインドサッカーの選手たちはスーパーヒューマンなんですよ。真っ暗闇でサッカーをする、という簡単な条件設定だけで、健常者のなかで優れているとされる能力や運動神経の強弱が完全に逆転する。

 つまり条件設定を変えれば、子供、お年寄りだからこそ勝てるスポーツもあり得るし、スポーツが苦手だからこそ勝てるスポーツもあるかもしれない。ルールデザインによって環境が変わり、環境が変わることによって、得手不得手が変わってくる。今までの長所、短所という考えすら変わっていく。そのことを意識して、スポーツをデザインをするのはすごく面白い。

 さらにいえば、人が持つ特殊な能力をテクノロジーに落とし込むことができるのではないか。障害を持っていたりして、違う環境にいる状態の人の中で芽生えた能力をインプットし、トランスファーする技術。たとえば、ブラインドサッカー選手の空間把握能力を、その選手と同じように目が見えない方が利用できるようなツールを作る。さらには、健常者にも展開できるかもしれない。そうした可能性が見えてきました。人の能力がもっと分かってくるとテクノロジーに落とし込めるようになるし、その実験場としての超人スポーツが築かれている。

―― なるほど、実験場ですか。

南澤 そう、実験場です。たとえば、研究者が人工筋肉を使って重い物を持ち上げることを研究していたとしますよね。そこにスポーツというフィールドを与えられると、当然、重い物を持ち上げる動作だけではなく、「走る」「飛ぶ」という違う動作をする人工筋肉も要求される。飛んで跳ねることができて、なおかつ壊れない人工筋肉がないとスポーツにはなりません。スポーツで使える人工筋肉は日常のさまざまなシーンで活躍できるはずです。

 しかし、研究者は今までそのように考えてこなかった。介護とか、荷物を運ぶ、とか限られたシーンを念頭に、ゆっくりとした動きの使用を思い浮かべていた。それが最初からスポーツ目的となり物作りをはじめると、とたんに日常的に何でも使えるものを目指しはじめるんですよ。新しい技術をスポーツで試してみて、そこから介護とか、労働作業に展開するとすごく使いやすいツールとなりはじめてきた。今、その流れが生まれています。スポーツというフィールドがちょうどいいサンドボックスになっている。

バウンダリーコンディション(境界条件)が最適解を生み出す

―― スポーツのルールという形で、複雑な条件を生み出し、テクノロジーと利用する人間によるさまざまな実験を行う、ということですね。

南澤 スポーツは仮の設定を作って、その都度、ルールを変えられるのがいいんです。激しめの運動をする、という条件設定をして、そこで使えるような状態になった技術ならば、本当に応用が効くものになっている。ルールとは、いうなれば環境設計です。フィールドの広さや、何をもって得点とするのか、といったことをコントロールする。いわばバウンドリーコンディションです。

―― バウンダリーコンディションとは何ですか?

南澤 境界条件のことです。ロボットなどさまざまなシステムを制御する際に使う言葉です。ロボットを動かすときに、どこまで動かしていいのか。モーターの速度はどれくらいで、どのくらい曲がるのか。境界はここまでですよ、というのを理解しないとロボットは動かせない。ロボットの重さやモーターの速度、フィールドという境界条件を決めて、そのなかでうまく動かす。すると、最適解が出てきます。それを人間に適用しているのが、スポーツです。

 競技のボールの重さ、サイズはこのくらい。フィールドはここからここまで。で、これは得点になるけれど、これは罰則だよ、と。その世界の中でやっていいこと、やってはいけないことをデザインすることで、スポーツは成り立っている。境界条件のなかで人間という意志を持ったひとりひとりが動き出して、最適解を見つけようとしている。

 そして、その境界を変えれば、当然、ひとりひとりの動き方は変わります。ちょっとフィールド狭くすると、戦略がまるっきり変わったりする。スポーツとは、人間がどんな条件ならどう動き、どういう力を発揮するのか、ということを俯瞰して見られる環境でもあります。

―― 最適解を導くことを考えると、勝敗が求められていることは大きいですね。

南澤 そう、勝ちにいくからこそ、人の能力が発揮される。そこではテクノロジーの能力も発揮されるのです。テクノロジーがどう役に立つのか。スポーツというフレームワークがあるからこそ、その姿が捉えやすくなる。スポーツのなかで実験をすることで、技術へのフィードバックが行われるし、人間の能力への理解にもフィードバックされる。技術研究の領域は、スポーツと出会ったことによって新しい切り口を見つけたんです。

超人スポーツ協会の役割

―― スポーツは戦争の代替物のように語られることがあります。南澤先生のお話を伺っていると、人類史のなかで、スポーツは実験場的なポジションにずっと置かれているのかもしれない、と思い始めてきました。

南澤 村のコミュニティーの結合を強化するためにも、スポーツが使われてきましたしね。たとえば、相撲は格闘技でありつつ、神事であり、人間の美学です。鍛え太ることで相撲に勝てる身体となり、神様にお供えするに値する競技へとなる。条件を設定することで、最適化した人間を生み出している。

 そこへテクノロジーが加わりました。何年もかけて身体を変えなくても、人間の身体に加える変化をテクノロジーで設計ができるようになった。力士がいきなり短距離ランナーにはなれないけども、テクノロジーだったらそれが可能です。ある時は重く、ある時は速くなる。そういうテストベッドに、スポーツがなりはじめている。

―― 南澤先生をはじめとする研究者の皆さんからすると、「スポーツ」を発見したような感覚でしょうか。

南澤 それはあります(笑)。しかも、スポーツはただ単に実験するだけではなくて、外の人に届く力をも持っている。従来、この技術は役に立ちますよ、と僕らからお披露目をしても、第三者には今ひとつ伝わらなかった。それが、スポーツというフィールドの中で走ったり、ボールが遠くに飛んでいくと「楽しい」「すごい」となる。技術の魅力、自分達の取り組みの魅力が、第三者に体験としてわかりやすく届く。実験と伝達力の2つの機能がスポーツにあることが、すごくいいですよね。

 今、日本の科学技術戦略のなかでキーワードとして広がっている言葉があります。「ヒューマンオーグメンテーション」、人間を拡張させるという意味です。社会は福祉に超人化技術を使っていこうとしています。僕ら研究者ではなく、外の人たちが、そうしたことに興味を持ち始めている。超人スポーツ協会は当初、人間をテクノロジーで拡張させようとしてきました。そして、すでにスーパーヒューマンとなっている人たちがいることに気付き、その能力を、他の人間にも利用ができるようなツールができないかと考えた。

 社会のインフラとして超人化技術を使用し、制度設計をしようとする流れがあり、人間拡張ビジネスが起きるならば、超人スポーツのありようが大事になってくるし、僕ら超人スポーツ協会の果たすべき役割は大きい、と思っています。


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柿崎 俊道

編集者。「スポつくWEB」のディレクションを行う。雑誌、書籍の編集者を経て、現在はWEBディレクターなどを行う。

専門分野はアニメ聖地巡礼。聖地巡礼プロデューサーとして、地域のサブカルイベントをプロデュース。埼玉県のアニメイベント「アニ玉祭」、東京都千代田区「アニメ聖地巡礼“本”即売会」、同区「ご当地コスプレ写真展」などを手掛ける。