【レポート】全国から31種の新しいスポーツが応募された 「ご当地ゆるスポーツアワード2019」開催!

戸倉順平(フリーライター)

 2019年12月22日(日)、「TORQUE SPICE & HERB, TABLE & COURT」(東京都渋谷区)にて、一般社団法人世界ゆるスポーツ協会が主催する「ご当地ゆるスポーツアワード2019」の本大会が開催された。

「ゆるスポーツ」とは、“年齢・性別・運動神経に関わらず、だれもが楽しめる新スポーツ”、“超高齢社会でスポーツ弱者が多い日本だからこそ生み出せるみんなのスポーツ”、“勝ったらうれしい、負けても楽しい。多様な楽しみ方が用意されているスポーツ”といったコンセプトで新たに創作されたスポーツの総称だ。

「ゆるスポーツ」というジャンルを作り出したクリエイター集団である一般社団法人世界ゆるスポーツ協会は、WEBサイトにてユニークで独創的なスポーツを動画付きで公開している。WEBサイト「ゆるスポーツ」を体験している様子やルールを見る事ができる。

 そして「ご当地ゆるスポーツアワード2019」は「ご当地ゆるスポーツ」によって地域⽂化の⾒直しと町おこしを提案することを目的としている。全国から31種目のゆるスポーツが集まった。その中から「ゆるスポーツ」らしい種目として5つが選ばれ、さらに優勝、準優勝が発表された。協会からは優勝には賞⾦30万円と「ゆるスポーツ」正式認定を授与、準優勝には賞⾦10万円が授与される。この日の会場は、足を運んだ一般参加者もいっしょに「ゆるスポーツ」の体験会が開かれた。ゆるスポーツに込められた地域文化を存分に味わったのである。


全国から選ばれた魅力的な5つの「ゆるスポーツ」

 最終選考の結果とともに、各種⽬のルールと制作者からのコメントを紹介しよう。

【優勝】「アブウド採らず」制作:Unispo
【準優勝】「ポートシュウマイ」制作:横浜市立南山田小学校 6年4組
【準優勝】「タコヤキュー」制作:高倉大輔、石川晃教
「トライトレイン」制作:横浜ゆるスポーツ協会
「ポップコーンウェーブ」制作:中能登町

【優勝】新種目「アブウド採らず」富山県利賀村“山菜採り”をリズムに乗って行うゆるスポーツ

制作:Unispo

 優勝は「アブウド採らず」だ。富山県利賀村の“山菜採り”をモチーフにした新種目である。昆虫のアブをモデルにした利賀村のゆるキャラ「オロロ」と、ウドの採取、そして「春祭り」の要素を掛け合わせた。プレイヤー全員が「山菜採り」のカゴをイメージしたプラスチック製のカゴを背負い、6人1組の1チームとなり、2チームで勝敗を競う。

 まず、チーム内は内野と外野の3人ずつに分かれる。カゴには山菜の「ウド」をイメージしたバンダナが取り付けられており、内野同士はこのバンダナを互いに取り合う。一方、外野はゆるキャラの「オロロ」をイメージした玉を相手チームの参加者のカゴに入れる。内野の選手はカゴについているバンダナが全て取られるか、3つの「オロロ」がカゴに入れられた時点で外野へ移動。最後まで内野にメンバーが残っていたチームが勝ちとなる。ただ、闇雲にバンダナを取り合ったり、カゴに玉を入れたりするのではなく、全員が祭囃子の合わせて一定のリズムで動きながら、スポーツを行うのがポイントだ。祭囃子は途中「そーれ!」という合いの手が入るが、その際には内野は全員がバンザイをして、外野はその瞬間だけカゴを狙って玉を投げ入れる事ができる。

「アブウド採らず」はゆるキャラ、祭囃子などご当地の文化的な要素を取り入れ、ゲーム性、ゆるさ、ご当地要素の3つがバランスよく取り込まれている。また、玉入れやバンダナを使った「しっぽ取り」など、誰もが一度は遊んだ事があるものをルールに組み込んだとの事で、はじめて体験する人でもすぐに理解できるという点がポイントだろう。

「アブウド採らず」はUnispoのメンバーによって制作された。Unispoは慶応義塾大学商学部の牛島利明研究会のプロジェクトだ。メンバーを代表して鈴木詩織氏からお話を伺った。

Unispoのメンバー。写真左下が鈴木詩織氏

―― 「アブウド採らず」を考案した経緯を教えて下さい。

鈴木詩織(以下、鈴木) 私たちの所属する牛島利明研究会が、限界集落となっている富山県利賀村と10年近く前から関りを持っています。限界集落ではありますが、「春祭り」や「山菜採り」といった村の魅力を知ってもらって活性化に繋げようという事で、今回のスポーツを制作しました。

―― どういった研究をされているのでしょうか?

鈴木 私たちの専攻が産業史、経営史、地域経済です。特に地域にフォーカスを当てた研究をしています。その中でUnisupoは「スポーツを通して誰もが繋がれる自治体」を目標に取り組んでいるプロジェクトです。今回の参加については課題や指導といったものではありません。利賀村の地域活性化をするにはどうしたらいいのか、研究をしていく中で自分たちでやりたい事として始めたものです。

―― 制作の上で工夫された点を教えて下さい。

鈴木 どうすれば皆が楽しめる「ゆるスポーツ」らしさが出せるかという部分ですね。最初は皆で手を繋いでやろうかとか、音楽も違うテンポに変えてみるとか、様々な案を試してみて今の形になりました。ただ、見ていると思ったよりボールがカゴに入りづらい場面が多かったので、もう少しカゴを大きくするとか、改善の余地はまだあると思っています。

―― 今後「アブウド採らず」をどのように広げたいと思っていますか?

鈴木 まずは、色々な人にプレイしてもらい楽しんでいただきたいです。そこを入口として、どういった経緯で作られたのかといった背景を通して、富山県利賀村の現状や魅力、伝統を知ってもらいたいと思います。


【準優勝】新種目「ポートシュウマイ」/横浜の名物“シュウマイ”、名産の“小松菜”、そして、“ポートボール”、“タグラグビー”の融合

制作:横浜市立南山田小学校 6年4組

 準優勝の2つめは「ポートシュウマイ」。小学校の保険体育の授業で取り入れられている「ポートボール」と「タグラグビー」のルールを組み合わせ、そこに横浜名物“シュウマイ”と名産品の“小松菜”の要素を取り入れたスポーツだ。4対4の2チームに分かれ、シュウマイの上に乗ったグリーンピースをイメージした緑のカラーボールを奪い合いながら、互いの仲間のコック(ゴール)が持つシュウマイに見立てたカゴにグリーンピース(カラーボール)を入れれば、1点が加算される。歩いていいのは3歩まで。相手からグリーンピース(カラーボール)を奪うには、グリーンピース(カラーボール)を持っている参加者の腰につけられてる小松菜に見立てたタグを「収穫!」と宣言して、取り外す事。「小松菜」を奪った参加者は、そのまま自分の腰にその「小松菜」を取り付ける。また、ゴールを決めて「シュウマイ」を完成させた参加者も「小松菜」を腰につける。相手からグリーンピース(カラーボール)を奪ったり、ゴールを決めて得点をした選手は自分の腰に「小松菜」が増える。つまり、グリーンピース(カラーボール)が取られやすくなる仕組みだ。このスポーツを考えたのは、横浜市立南山田小学校6年4組の学生と担任の塩崎柚佳氏だ。プレゼンテーションではクラスの代表として松澤慶典氏、樋口雄一氏、橋本優来氏、藤田心奈氏の4人が登壇した。

「ポートシュウマイ」はゆるスポーツとして選ばれなかった。「認定してもらいたかった」と子供たちは話す。準優勝に選ばれ、嬉しさ半分、しかし、認定を逃し、悔しさ半分といった表情を見せていた。

 筆者は「ポートシュウマイ」は本気になって楽しめるくらいゲームとしての完成度は高い、と感じた。しかし、かわりに「ゆるさ」が足りない、とも感じた。

 塩崎先生は「悔しかったけれど子どもたちに努力しても上手く行かない事がある、という社会の厳しさを知ってもらえたのはよかったと思う」と話す。参加した小学生たちは今年で小学校を卒業する。しかし、卒業後も再度チャレンジしたい、と語ってくれた。

左から 塩崎柚佳先生、橋本優来氏、松澤慶典氏、藤田心奈氏、樋口雄一氏

―― 「ご当地ゆるスポーツアワード2019」に参加した経緯を教えて下さい。

塩崎柚佳先生(以下、塩崎先生) 子供たちが1年間を通して学んでいく総合授業を行っています。これは私たち教師から一方的に何か教えるのではなく、子供たちが身に着けたい力を自ら考え、どういった勉強をすればいいのかを研究していくというものです。まずは健康な体を維持するために体力、その他にもプレゼン力、発想力も身に着けたいという意見が出てきました。そして、子供たちと話し合った結果、新しいスポーツを考えてそれを登録してもらうという目標設定をしました。いろいろ調べていく中でこの「ご当地ゆるスポーツアワード」が開かれるという事を知って、自分たちの力を試してみようという事になりました。

―― 「ポートシュウマイ」を考案した経緯を教えて下さい。

塩崎先生 コンテストを勝ち上がるにはどんなスポーツにしたらいいのか。そしてご当地の要素として何を取り入れたらいいのかを考え、各自が1つアイデアを出すという夏休みの課題を作りました。その中から、どのスポーツだったら優勝に選ばれるかをクラス全員で話し合って決めました。

―― それぞれ工夫した点はどういったところでしょうか。

松澤慶典・藤田心奈 強い人と弱い人の差をなくすにはどうしたらいいかを考えて調整するのが難しかったです。

樋口雄一 皆が楽しめるようにはどうすればいいかという部分が苦労しました。

橋本優来 人によるその差をどうしたらなくせるか。何度も皆でやってみて、修正していきました。

―― 今後、「ポートシュウマイ」をどのように広めていきたいですか?

塩崎先生 まずは帰ってクラスのみんなと相談しようと思っています。

樋口雄一 今日やってみて、新しい問題点も見えてきたので改善してよりよいものにしたいです。


【準優勝】新種目「タコヤキュー」大阪名物のたこ焼きと野球の組み合わせ

制作:高倉大輔、石川晃教

 準優勝に選ばれたのは、大阪名物であるたこ焼き、野球、そしてお笑いの3つの要素を組み合わせたのが「タコヤキュー」だ。1チーム4人編成で、野球と同じく先攻後攻に分かれて戦う。野球を行う場所と、たこ焼きを焼く場所の2つに分かれ、攻撃側(お店)の1人がバッターボックスへ、残りの3人がたこ焼き機の前に待機する。審判の「プレイタコ焼き」の掛け声とともにバッターが「まいど!」と声をかけ、守備側(お客さん)が「たこ焼き頂戴!」の声でボールをバッターに向かって転がす。バッターが「はいよ!」の掛け声と共にボールを打った瞬間がスタートとなり、たこ焼き機の前に待機する3人が一斉にたこ焼きに見立てたカラーボールをひっくり返していく。守備側はバッターが打ったボールを拾って、4人全員でホームベースの上に立ち、「たこ焼きできた?」の声でゲームはストップ。3人がひっくり返したカラーボールの数の合計が点数となる。特徴は「まいど!」や「たこ焼き頂戴!」と声を掛け合う事で参加者のコミュニケーションが行われるように考慮されている部分だ。ここがお笑い=コミュニケーションの要素となっている。制作者は児童指導員の高倉大輔氏と、自ら発達障害者として体験談を執筆している石川晃教氏。

「タコヤキュー」は残念ながら、「ご当地ゆるスポーツ」としては認定されなかった。しかし、体験コーナーでも参加者たちが大笑いしながら楽しんでる様子が見られ、「ゆるさ」で今回の5種の中でトップだろう。短期間でとてもユニークな新種目を作ったおふたりには今後も面白い種目を作り、私たちを存分に笑わせてくれるに違いないと期待している。

左から石川晃教氏、高倉大輔氏

―― 「タコヤキュー」を考案した経緯を教えて下さい。

石川晃教(以下、石川) 私が過去に「ゆるスポーツ」を体験した事があり、自分でスポーツを作ってみたいと思っていたところ、今回のコンテストの話を伺って、せっかくだから1人じゃなくて他の人も巻き込もうと高倉大輔さんを誘いました。

高倉大輔(以下、高倉) 僕は児童指導員として、発達障害者の子供たちも教えていて、「運動療育」という方法で子供たちが何かをやる気にさせるスポーツを考える仕事をしています。本格的なものではありませんが、凄くミニマムな「ゆるスポーツ」をしょっちゅう作っている感じなんです。そんな中で今回の石川晃教さんの誘いがあったので、1つ本格的なものを作ってみようかという事になりました。

―― 実際の制作過程について教えて下さい。

高倉 大阪に引っ掛かるワードは何かという事で意見を出し合いました。でも、なかなかしっくりこなかった。例えば、「テニス」と「道頓堀」を合わせて「道頓ボレー」とか、ナンパが多い難波で「ナンパ難波」とか。

石川 こんな感じでどんどん案を出して、そこからどうやってスポーツに組み合わせるかと詰めていった感じです。

高倉 「たこ焼き」と国民的スポーツの「野球」の2つの「タコヤキュー」の語呂がピタッとハマって「これだ!」となりましたね。

石川 制作を始めたのが、締め切り2週間前です。テストプレイもほとんどできないし、用具も自分たちで製作しなくてはいけないし、手探りの状態でした。僕たち2人だけだったので、もっと人を集める必要があった、というのが課題です。

―― 今後の展開はどのように考えていますか?

石川 「タコヤキュー」はもちろんですが、先ほどお話した「道頓ボレー」など、色々なご当地スポーツを制作して運動会をやってみたい、と思っています。

高倉 「ご当地ゆるスポーツ」ともコラボして東西対決とかできたら面白いですね。


新種目「トライトレイン」横浜発祥の鉄道と、横浜発祥のラグビーの掛け合わせ

制作:横浜ゆるスポーツ協会

 横浜は日本初の鉄道開通と、日本初のラグビークラブが発足された地。その2つの要素を掛け合わせたスポーツが「トライトレイン」だ。線路に設置された台車を一回だけ手で漕いで、ゴールにトライを決めるという一見単純なルールだ。スタート地点は「新橋駅」となっており、品川なら2点、川崎は3点、神奈川は4点、ゴールとなる横浜は5点。横浜に近いほど獲得できるポイントが増える。ラグビーと同じく、トライを決めれば5点が加算され、合計ポイントで勝敗を決める。ただし、トライをする際にゴール前の線路の端に台車が付いてしまうと、「オーバーラン」となり減点。線路の端につかないよう、トライが決められるギリギリの位置に台車を止める事を目指すバランス調整が勝敗を分ける。プレゼンテーションを行った横浜市体育協会の青井純子氏に「トライトレイン」の制作意図と今後の展開を伺った。

横浜市体育協会 青井純子氏

―― 「トライ・トレイン」を考案した経緯を教えて下さい。

青井純子(以下、青井) 2019年は日本初のラグビーチームを作った横浜で、ワールドカップの決勝が行われました。昨今のラグビーの盛り上がりをさらに強めたいというのがきっかけです。誰もが楽しめる「ゆるスポーツ」を考案し、ハードルを下げる事で、スポーツを通じて横浜を多くの人に知ってもらいたいと思っています。もうひとつ理由があります。「ゆるスポーツ協会」のはじめての支部で「横浜ゆるスポーツ協会」を立ち上げました。支部独自のスポーツを作ろうという事で動き始めて、日本ラグビー協会さんにも協力して貰って、今の形になりました。

―― 今後、どのようにこのスポーツを広めていきたいですか?

青井 まずは横浜市内でしっかり認知度を上げていきたいです。横浜には色々な鉄道が乗り入れているので、各鉄道会社さんとの連携も検討しております。現在、市内の小学校などに訪問する機会があるんですが、このスポーツで例えば耳が不自由な人もいっしょに楽しむにはどうしたらいいのか、といったルールを子どもたちと作りたいと考えています。「ゆるスポーツ」を子どもの考える力を養うスポーツ教材にしたいと思っています。現在はスポーツ庁の管轄部署で行われている活動ですが、教育委員会から学校へ補助金を出してもらい、授業のひとつとしてアプローチできないかと思っています。体験してもらった学校からは「また来て欲しい」というお声や、自分たちが考えた成果を見て欲しいというお願いをされる事があります。今後のためにもしっかりと連携し、広めていきたいですね。


新種目「ポップコーンウェーブ」石川県能登の基盤産業“織物”を使った玉入れ

制作:中能登町

 石川県鹿島郡中能登町は能登上布に代表される世界有数の紡績織物の産地である。地元の活性化のために体育協会や福祉施設、多くの地元の人たちにより今、「繊維スポーツ」の創作が始まっている。「ポップコーンウェーブ」はその第1弾である。大量の布の球を乗せた大きな布の端にはミトンの手袋が取り付けられており、参加者はその手袋に手を入れ、腕を上下左右に振って布の左右に空けられた穴に向かって玉を入れていく玉入れゲームだ。布の球が激しく跳ねる様がポップコーンに似ているところから、「ポップコーンウェーブ」の名が付けられた。「ポップコーンウェーブ」は中能登町役場の駒井秀士氏が紹介した。

中能登町役場 駒井秀士氏

―― 「ポップコーンウェーブ」を考案した経緯を教えて下さい。

駒井秀士(以下、駒井) 中能登町が誇る繊維製品を使って地域活性化ができないかという事で、ご当地産業とスポーツを組み合わせて作りました。「ポップコーンウェーブ」のために用意した器具は全て紡績業の廃材を利用して作っています。地元の紡績業者の皆さんから、捨ててしまうのはもったいないから、ぜひ役に立てて欲しいという事で協力してもらって完成したスポーツです。

―― 参加者の皆さんは玉が跳ねている様子や、布を上下させる動きを楽しんでいるように見受けられました。

駒井 勝ち負け関係なく、皆が楽しめるスポーツを目指して制作しました。体験した皆さんからは、楽しみながら身体を動かせて良い運動になったという感想をいただきました。

―― 今後、どのように「ポップコーンウェーブ」を広めていきたいと考えていますか?

駒井 今回の「ポップコーンウェーブ」は「繊維スポーツ」の第1弾で、来年までにこういった「ゆるスポーツ」を15個、作る事を目標にしています。運動が苦手な方、高齢者や海外の方など誰でも楽しめるものを作って、例えば「人気投票」といったイベントなどを行いたいと思っています。さらに「ポップコーンウェーブ」についても、まだブラッシュアップできる余地があると思っています。もっと面白くなるように手を加えていくつもりです。



【澤田智洋氏 インタビュー】スポーツにおける社会型モデル

「ゆるスポーツ」を作ろうと思ったきっかけについて、代表を務める澤田智洋氏にお話を伺った。

ゆるスポーツ協会代表理事 澤田智洋氏

澤田智洋(以下、澤田) 「ゆるスポーツ」をはじめたきっかけは、第一に自分がスポーツが苦手だったことです。スポーツ庁の世論調査によると、「成人の週1回以上のスポーツ実施率は55.1パーセント」と発表がありました。裏を返せば、44.9%の人はスポーツをしていない。これはスポーツをしてない人が悪いのではなく、スポーツに責任があるのではないかと思ったんです。福祉業界では、医療型と社会型という2つのモデルがあります。医療型というのは車いす生活の人が困難にぶつかっている理由はその人の健康の問題である、という考え方。段差が乗り越えられないのは当人の責任だという事です。一方、社会型は段差を作ってある事が問題であって、社会の方を整備しようという考え方です。スポーツにおいても社会型モデルが必要なのではないかと思ったんです。そんな中、東京五輪の後押しや、テクノロジーの革新もあって「スポーツを作る」という機運が高まっている事を感じ、「ゆるスポーツ」の活動が始まりました。

―― 活動自体は2015年から行われ、2016年には社団法人となりました。その理由はなんでしょうか?

澤田 最初はライトにテストマーケティングをしてニーズを確かめたかったんですよね。すると、初年度から様々な自治体、企業から「スポーツを作って欲しい」という依頼があったんです。そういったビジネス的なチャンスがあるところで、法人化しないと口座も作れないし、お仕事で名刺を渡すにも“ゆるスポーツクリエイター集団”では、信用がないなと思ったんです。

―― 協会には多くの「ゆるスポーツ」が登録されています。どのようなサポートがあるのでしょうか?

澤田 協会が認定する「ゆるスポーツ」としての基準というのが一応あって、認定スポーツについては僕らの方でも発信していくようになります。器具のレンタルや審判の派遣などのサービスも展開しており、お金を頂いている以上は、その対価に見合うものを提供できているのか、僕らも確認しながらサポートしています

―― 制作者側の方にはどういった形で還元されていくのでしょうか。

澤田 制作者によって色々ですね。スポーツの知名度優先で、企業さんでもロイヤリティや企業名も出さなくていいので、とにかく広めて欲しいという事もあれば、商標や権利、営業方法や料金についてもきちんと決めてビジネスとしてやっていこうというところまで様々ですね。どちらもアリだと思うので、こちらも制作者サイドに意思確認をして、臨機応変に対応するようにしてます。

―― 「ご当地ゆるスポーツ」でコンテストをしようとしたのはなぜですか?

澤田 地域には魅力的なモノがいっぱいあるんですよね。でも、そこに住んでいる人たちが知らなかったり、スポーツに限らず自治体から交流が少ないというお悩みの声も上がっています。地域の掘り起こしや交流に繋がって残るものを作りたいと思った時、ゆるスポーツは有用だと思ったんです。富山県氷見市が作った「ハンぎょボール」というご当地ゆるスポーツがあります。ハンドボールの聖地であり、鰤(ブリ)の名産地である氷見市だから生まれたスポーツです。地元の人たちからの支持が厚く、イベントや大会も積極的に開いて授業に取り入れている学校もあります。そしてこのスポーツを通して、改めて名産である鰤(ぶり)を再認識したり、制作したメンバー同士を中心に交流が広がっている。これを全国的な規模でやれば、さらに地域が活発化するのではないかと思い、コンテストを開きました。

まとめ

 アワード終了後、一般社団法人世界ゆるスポーツ協会代表 澤田智洋氏は「ご当地スポーツを活性化させ、この動きを広げていき、全国47都道府県全部からゆるスポーツの応募が来るようにしたい」「(『ゆるスポーツアワード』を)来年以降も開催したい」と語った。

 優勝「アブウド採らず」は富山県利賀村のゆるキャラ「オロロ」と連携させた新種目だった。ご当地のゆるキャラや特産品が、地域外の人たちとスポーツを作り、体験することを通じて、地域外へと広まっていく。そのことをまさに実感し、実際にプレイすることで体感した「ゆるスポーツアワード2019」だった。

 個人的にはアワードに登場した「ご当地ゆるスポーツ」の運動会が行われたら、その際にはぜひ参加したい。


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戸倉順平

1980年生まれ。フリーライター。ウェブメディアを中心にゲーム、アニメイベント、eスポーツ関連の取材や、声優アーティスト、アニソンシンガーのライブレポートなどを執筆。